ナマステ、吉井と申します。ヒンドゥー教の聖地バラナシを毎年訪ねており、多くの場所を歩き回ってきました。
バラナシに限らずインド全体に言えることですが、月並な表現をさせてもらうと「カオス」がインドの魅力であり、様々な楽しみ方が出来る国です。
バラナシはバックパッカーの聖地などと言われていますが、この街を旅する際は必ずしもバックパッカーに倣って貧乏旅行をする必要はありません。
しかし、自分の旅行期間、費用、体調面、そしてどのような形でバラナシと向き合うか、これらを考えた上で宿泊するエリアとして適している場所は分かれてきます。今回はバラナシでおすすめの宿泊エリアを大きく3つに分けて紹介したいと思います。
バラナシのおすすめエリア1:メインガート周辺
外国人観光客のみならず、インドの観光客や巡礼客も含めてバラナシ滞在中にほぼ100%訪れるスポットが、ガンジス河です。
ヒンドゥー教徒はこの聖なる河で祈りを捧げることにより、全ての罪が洗い流されると言われています。
インド人の間では母なる河、「マザーガンガー」の愛称で知られ、河沿いにはガートと呼ばれる階段状の沐浴場が数キロの長さにわたり並んでいますが、そんなガンジス河のメインガートとなっているのがダシャーシュワメード・ガートです。
夕方になると多くのガートで「プージャー」と呼ばれる儀式が行われますが、ダシャーシュワメード・ガートで行われるプージャーは最も多くの観光客や巡礼客が集まります。
メインガート周辺にはたくさんのゲストハウスがあり、ガンジス河沿いを並行して通っているベンガリートラという狭い小路には、多くのレストランやみやげ物店、楽器屋などが連なっており、外国人観光客、地元住民、インド人巡礼者など様々な人種、人間が混在するバラナシを象徴する通りとなっています。
メインガート周辺にあるゲストハウスは、そのほとんどが安宿と呼ばれる部類に入り、バックパッカーの多くがこのエリアに宿泊しています。個人的な見解ですが、欧米人よりも日本人、韓国人、香港人などアジア人が好んでいる印象です。
メインガート周辺は、濃いバラナシを楽しめるエリアではありますが、道の多くが舗装されておらずガタガタで、道には牛の糞が大量に落ちており、歩いているだけで100通りの怪我の仕方を覚悟しなければならないと言っても大げさではないほどです。
プージャー前後の時間になると100m歩くのに5分前後かかってしまうほど混雑します。また、詐欺などの小さいトラブルも多く、いかにして観光客から金を奪おうかと知恵を絞っている人間味あふれるインド人も多いです。
これらのことから、このエリアはスーツケースを持って歩くような旅行スタイルには向きません。費用を安くおさえたい、濃いインド人たちに揉まれたい、どんなトラブルにあっても大丈夫、比較的体力も旅行期間もある、このような方々におすすめのエリアです。
バラナシのおすすめエリア2:アッシーガート周辺
ガンジス河沿いに60以上も並んでいるガートの最南端に位置しているのが、このアッシーガート。
メインガート周辺と比較するとバラナシ特有の人間臭さも多少薄れ、比較的穏やかな雰囲気を感じるエリアです。
このエリアの近くには、バラナシ・ヒンドゥー・ユニバーシティというアジア最大級とも言われる敷地面積を誇る大学もあり、この大学に留学している日本人留学生の多くはこのエリアから大学に通っています。
アッシーガート近くのベルプラエリアには、小さめではありますがショッピングモールやスーパーマーケットなど、値段交渉をせずに買い物が出来る、ガート近辺においては貴重なお店もあり、私もよく利用しています。
多少ゲストハウスの値段もメインガート周辺に比べて高い傾向にありますが、近場にはお洒落なカフェやピザ屋などもあり、個人的な感覚では、謎の葉っぱを吸っている欧米人旅行者、とりわけイスラエル人とスペイン人が多いイメージがあります。
アッシーガート周辺のインド人はメインガート周辺ほどガツガツしておらず、詐欺などのトラブルも比較的少ないため、あの手この手で声を掛けてくるインド人たちに疲れた場合はこのエリアで少しのんびりすることをおすすめします。
メインガートまで河沿いを歩いて30分前後で到着するほか、周辺には河の対岸にあるラームナガル城、ドゥルガー寺院などもあり、観光の拠点としても便利で、大雑把な言い方をすれば、メインガート周辺からインド臭さを少しマイナスしたようなイメージのエリアです。
ある程度費用や旅行期間に余裕があり、メインガート周辺の人間臭さに疲れ、少し離れた立ち位置からのんびりとバラナシを眺めたいという方におすすめのエリアです。
おすすめエリア3:バラナシ・ジャンクション駅周辺・および新市街エリア
駅周辺こそ多少のバラナシ臭さは感じますが、メインガートから見てバラナシ・ジャンクション駅を越えた所にある新市街エリアは、ガート周辺に滞在している旅行者がこの新市街エリアを訪れると、まるで違う国に来てしまったかのような奇妙な感覚を覚えてしまうほど静か。周辺には官公庁の施設や高級ホテル、ショッピングモールなどが立ち並んでいます。
このエリアにあるホテルは、ビジネスマンが出張で使うような中級ホテルから、ホテルに一泊する際の値段で、メインガート周辺の安宿になら3ヶ月くらい過ごせるんじゃないかというほどの超高級ホテルまであり、値段の高いホテルから予約が埋まっていく傾向にあります。
余談ですが、私は初めてのバラナシ滞在の際に、新市街近辺のカントンメント地区にある航空会社である「エアインディア」のオフィスに向かいました。
メインガート周辺で拾ったオートリキシャの運転手に「カントンメントにあるエアインディアのオフィスまで言ってくれ」と頼んだところ、「エアフォース」という文字が門に大きく書かれた空軍基地に連れて行かれたことがあります。ちなみに軍人にもナマスカールと挨拶すると笑顔で返してくれますよ。
この際は、もののついでと周辺を散策したのですが、10分道を歩いても数人のインド人としかすれ違わないという、異世界に迷い込んだかのような感覚を覚えました。
周辺のみやげ物店では買い物をする際にも値段交渉を行う必要がなく、高級な物が揃えられている店が多いので、時間があまりなく短い時間で良いみやげ物を探したいという方には便利です。
また、メインガートやバラナシ・ヒンドゥー・ユニバーシティ、ゴールデンテンプルなどの観光スポットにも、オートリキシャで20分~30分前後と、それほど時間も掛からずにアクセス出来ます。
滞在時間が短い、費用に余裕がある、せっかくインドに来たのだから現地の高級ホテルに宿泊してみたい、出来るだけ身体に負担を掛けたくない、このような方々におすすめのエリアです。
これからインドのバラナシを訪れる方へ
メインガート周辺にある安宿のドミトリーのベッドに寝転んで天井を眺めていると、ごく稀に、安宿に泊まり出来るだけ金を使わないことこそが旅の醍醐味だと盲信し、その価値観までも人に押し付けてくる啓蒙家のような人間に会うことがあります。
この考え方はインド、とりわけバラナシを旅する上では危険です。
100人いれば100通りの旅のスタイルがあり、それら全てを飲み込んでくれるのがインドの魅力であるからです。
この記事を参考にバラナシを訪れる際は、自分の旅のプラン、旅のスタイル、インド人との距離感、これら全てを総合的に考えて、ぜひ自分にあった宿泊エリアを選んでもらいたいと思います。ナマステ。